そうでもしなきゃ、近いうちに平くんに笑いかけてもらえなくなるかもしれない。
いまでもレアな、彼の一瞬の笑顔。
木内さんの受験が終わって、ふたりがまた付き合うようになったら……平くんの笑顔はその時、木内さんだけのものになる。
恋ってそういうものだ。
失恋ってそういうものだ。
自分じゃどうにもできないもの。
感情も痛みも行動も、すべてがコントロール不能に陥るもの。
中学の時、ちょっとだけ付き合った彼氏に一方的にフラれた時だって、こんなに胸が痛くなりはしなかった。
平くんへの気持ちがいかに特別か自分でもよくわかる。
倉庫に入ると、棚や段ボールにびっしり詰められたチョコの箱の山。
そこからひとつ手にとってため息を落とす。


