ふと、木内さんがこっちを向いたので慌てて玄関に隠れた。


心臓がバクバクいってる。

平くんの用事って、木内さんに会うことだったのか。


それならそうと、言ってくれたらよかったのに。

別に隠すことなんてなかったのに。


なんて、わざわざわたしに話すことでもないのだけれど、ついそんな恨みごとを言ってしまいそうになる。


この感情は知ってる。

いわゆる嫉妬。ただのやきもちだ。

平くんは私のものでもなんでもないのに、独占欲みたいなものすらあった。


やっぱり木内さんはまだ、平くんのことが好きなのかな。

そして平くんは前に、木内さんにもう気持ちはないって言ってたけど……昔好きだった人は、時間が経っても特別だ。


わたしはそれをよく知っている。

きっと平くんにとっても、木内さんはずっと、特別な人なんだろう。