それから手こずっていた問題の解き方を教えてもらって、テスト直前まで彼はわたしの勉強に協力してくれた。
最初はわたしの程度があまりにも低すぎてあきれてたっぽいけど、最後の方はすごく親身になってくれて。
気付いた時には好きになっていた。
わたしが必死に勉強している間、彼は本を読んでいた。
分厚い単行本で、ミステリー小説だと言っていた。
さすが秀才だ天才だと言われていた平くん。
あの頃からテスト直前でも特別勉強をする必要はなかったみたいだ。
彼と過ごす放課後の、静かな時間が好きだった。
わからない部分をたずねたくて声をかけると、前のめりになって手元をのぞきこんでくる。
その時に揺れるさらさらな前髪に見惚れた。


