「平くん、直球だね……」
「ごめん。ちょっと気になって」
わたしは悩みながら歩くのを再開する。
平くんも黙って横に並んだ。
これわたし、話さなきゃだめかな?
だめな流れだよねぇ、たぶん。
「あれは――」
***
「さっきから悩んでるみたいだけど、どこがわかんないの?」
一年生のある日。
数学の難問に頭をかかえていた時、ふと前に座る人から声をかけられたのだ。
きっちり制服を着て、さらさらの黒髪を清潔な雰囲気にセットしている男のコ。
同じクラスの平くんだと気付いて驚いた。
話したこともなかったし、とても頭が良いのは知っていたから、同じクラスだけど遠い人だと思っていた。


