「弟がいきなりあんなこと言って」
「あ、う、ううん。びっくりしたけど、全然。あの……冗談、なんだよね?」
「さあ、どうかな。あいつのことは、俺もよくわからないから」
「そっか……。冗談だとは思うんだけどね!」
わたしみたいな地味で頭の出来も悪いどんくさい女に、本気になるわけなんてない。
だからきっとあれは、聡くんの冗談だ。
そう思うことにする。
でも彼のイメージが、1年の時のものとはだいぶズレた。
もっとこう、落ち着いているというか、静かで距離がある感じだけど、親切で。
不器用だけど優しい人なんだと思っていた。
いまの聡くんの人を食ったような言動は、少なくともなかったと思う。
この2年で聡くんも変わったのか。
それとも受験が影響しているのか。
うちの拓も、別人みたいになったから、受験の怖さは侮れない。


