聡くんの言葉が冗談じゃないのなら、素直にうれしいと思う。
でも、生意気だけど、身のほどを知れって感じだけど、彼への答えは決まってる。
“NO”だ。
わたしがいま好きなのは、恋をしているのは、お兄さんの平篤くんだから。
だからこそ、平くんに知られたくなかったのに。
わたしが1年の時、弟の聡くんをいつも見つめていたことを。
きっと彼に気付かれてしまった。
わたしが聡くんを好きだったことを。
知られたく、なかったなあ。
平くんにどう思われるのか恐い。
弟の代わりにしてる、なんて思われて嫌われたら……きっとわたし、立ち直れない。
「ごめんね」
「……えっ!? 何が!?」
突然隣りを歩いていた平くんがぽつりと謝るから、びっくりして立ち止まってしまった。
彼も立ち止まって、ゆっくりわたしを振り返る。


