「いまは俺も受験生だから、付き合えたとしても何も出来ないからね。受験が終わったらあらためて言いにいくよ。だからそれまでさっきのこと、考えておいてね」
そう言うと、聡くんはわたしの返事も聞かずにリビングを出ていってしまった。
気まずい雰囲気を置きみやげにして。
「えーと……冗談、だよね?」
兄である平くんに、確認の意味で言ったんだけど、彼はますます眉間のシワを深めただけで何も言ってはくれなかった。
そこは笑って否定してほしかった。
聡くんは気にしなくていいと言っていたけど、わたしはやっぱり帰ることにした。
リビングに残った気まずい雰囲気から逃れたかったのもある。
いまはマンションを出て、送ると言ってくれた平くんと並んで歩いていた。
空を見上げて、白い息を吐く。
息と雲が混じり合い、夕焼けの色にとけていった。


