「聡。お前、志保はどうした」
平くんの声にハッとした。
そうだ。
確か木内さんは平くんと別れてから、弟の聡くんの方に行ったって……。
「志保? ……ああ、木内さん? なんで彼女が出てくるのかわからないんだけど」
「仲良くしてるんだろ」
兄に言われて、聡くんは首を傾げながらも軽くうなずいた。
「まあ、クラスメイトだし、同じ予備校だからね。でもそれだけだよ。それに彼女が好きなのは篤だろ?」
「は?」
平くんはいぶかしげな声を出したけど、わたしはどこか納得していた。
やっぱり、木内さんは平くんのことがまだ好きなんだ。
前に学校の玄関で会った時、そんな感じがしたもん。


