きっと聡くんも笑顔だけど、余裕はないってことなんだろう。
「いらっしゃい、春川さん」
「あ……お邪魔してます」
聡くんの笑顔を向けられて、どきりとしながら頭を下げた。
これはわたし、帰った方がいいよね。
明後日センターで、集中して勉強したくて彼は家にいるわけだから。
わたしがいておしゃべりなんてしてたら、本当に邪魔でしかない。
「あ、あの。わたし帰るね」
「え」
「気にしないで、春川さん。俺集中すると周りの音が聞こえなくなるから大丈夫だよ」
聡くんはそう言ってキッチンに向かう。
彼はああ言ってくれたけど、やっぱり帰った方がいい。
わたしは出していた自動車免許の問題集をバッグにしまった。
「俺から誘っておいてごめんね、春川さん」


