机の横に無造作におかれた拓のバッグを見つける。


おそるおそる中をのぞいてみた。

緊張で手が震えたけど、中にはお財布とティッシュがあるだけ。

漫画の本は入ってない。


確か本屋ではこのバッグを持っていたはずだ。


今度は背の高い本棚に目をやる。

そこには小説の単行本や文庫本、そしてたくさんの問題集と参考書がずらりと並んでいた。


漫画の背表紙はひとつも見当たらない。

拓はわたしとちがって漫画は読まないのだ。

字ばっかりの分厚い小説や伝記本なんかを読んでいる。


だから少年漫画を拓が万引きするなんて、ありえないって思ったんだ。

読まないものを盗んだってしょうがないだろう。


ベッドの下も一応のぞいてみたけれど、結局漫画は見付からなかった。