視線を階段から、拓の部屋のドアへと移す。
ごくり、と喉が鳴った。
拓がいない時に、拓の部屋に入ることはない。
前は気軽に入ってたけど、ここ1年仲がぎくしゃくし始めてからは遠慮していた。
拓だって思春期の男のコだし、見られたくないもののひとつやふたつあるだろう。
わたしがこれからすることは、プライバシーの侵害ってやつにあたるんだと思う。
でもどうしても、それをせずにはいられなかった。
下の階を気にしながら、拓の部屋のドアノブに手をかける。
そっと扉を開いて、中に身体をすべりこませた。
机の上や床には、問題集やら参考書やら、プリントやらが積み重なっている。
きれいなのはベッドの上だけだ。


