その日の夜。


お風呂から上がって部屋に戻る途中、2階の廊下で拓とでくわした。

相変わらず目の下にクマを作っている。


今日も夕飯の席に拓は顔を見せず、いつもより早めに帰ってきていたお父さんは眉間のシワを深くしていた。。



「拓。晩ごはん、ちゃんと食べた?」

「……食べたよ」



不機嫌そうに言って、拓が下へ降りていこうとする。

慌ててその腕をつかんで止めたけど、思い切りにらまれてしまった。



「なに」

「あ……えっと」

「つーか放せよ」



乱暴に振り払われる手。


着替えを持っているから、お風呂に向かうんだろう。

昔はよく一緒にお風呂に入った。

お風呂でいろんな話もした。


いまはもうムリだけど、わたしが男だったら、少しはちがっただろうか。