そっと離れていく彼の手。


もう少し、包まれていたいと思った。

なんて贅沢な。


解放されたわたしの手は、彼から温もりをプレゼントされたみたいにポカポカしていた。



「問題集、買ってくるね!」

「ほんとに買うんだ……」

「買うよ! 買いにきたんだもん!」



若干あきれ顔の平くん。

彼なら必死に勉強しなくたって、学科も楽勝なんだろう。

効果測定も仮免も、あっという間だろうな。


すぐに差が開いてきっと予定も合わなくなる。

だからせめて、運転がだめでも勉強くらいはがんばらないと!


そう決意しながらレジに向かう途中も、頭に浮かぶのは拓のやつれた顔だった。