今度こそ、拓は本気でキレるかもしれない。

前はケーキとお皿がダメになっただけだけど、次は痛い思いをすることになるかもしれない。


それでも、見て見ぬフリはできないと思った。


わたしは、拓のお姉ちゃんだから。


自分にそう言い聞かせた時、ギュッとひときわ強く手を握られた。



「春川さん。ムリしないように」

「ムリ……?」

「きみには家族がいるんだから。弟さんのことでひとりで抱え込むのはおかしいよ」



でも、もし拓が万引きなんてことをしていたら、お母さんにも、当然お父さんになんて絶対に言えない。


両親が知ったらどうなる?

いまでこそ危ういのに、本当に家族の仲が壊れてしまう気がした。



「それに、俺もいるから」