拓は少年漫画の棚から1度離れて、参考書のコーナーに向かった。
でも数分でまた漫画の棚に戻ってきて周囲を何度か気にしたあと、平積みされている漫画を手にとった。
そしてレジとは反対方向に歩きだし、棚の影に入った瞬間……。
「いま……っ」
不自然に肩が動いた。
棚のせいで見えなかったけど、漫画をバッグに入れる動きだった気がする。
そして棚の影から出てきた拓の手には、さっきまであったはずの漫画がなくなっていた。
拓はそのまま少し早足で店を出ていく。
まるで逃げるみたいな後ろ姿だった。
わたしは追いかけるどころか、その場から一歩も動けなかった。
「うそ……」


