でも彼は雑誌は全然読んでいなくて、よほど興味があるのか、拓のいる少年漫画の棚の方をじっと見つめていた。
また棚に隠れながら平くんのもとへ行く。
途中他のお客さんに変な目で見られてしまって恥ずかしかった。
「平くん、お待たせ。うちの弟、そんなに見るとこある?」
「なんか変だ」
「へ?」
「弟さんの様子、おかしくない?」
視線を少年漫画コーナーに向けたまま、真剣な声で平くんが言うから、
ドキリとしながらわたしもそちらをうかがった。
拓がいる。
まだ手には何も持っていない。
漫画の背表紙を見ては髪をさわったり、ポケットからスマホを出したり。
落ち着きがなくて、そして妙に周囲を気にしている。
確かに変だ。
イヤな予感がした。


