昔は戦隊モノのヒーローになりたいとか、新幹線の車掌さんいなりたいとか、プロのサッカー選手になりたいとか、コロコロ変わる夢を聞かせてくれたっけ。
一緒にお菓子を作ったことも何度もあったけど、ケーキ屋さんになりたいとは1度も言ったことがなかったな。
たぶん、拓は少し不器用だったから。
「拓は将来、何になりたいとかあるのかなぁ」
「俺も聡の夢とか、知らない」
「男の人ってあんまりそういうこと話さないの?」
「昔は話したかもしれないけど。いまは会話自体少ないよ」
互いの兄弟事情を話しながら駅前の本屋に入った。
いつもならレシピ本のコーナーか、少女漫画の棚に向かうところだけど。
今日のわたしはちょっとちがう。


