買い被りすぎだ。
正確に言うと、わたしはパティシエの道を自分で選んだわけじゃない。
お父さんがケーキ屋をしていたから。
生まれた時から、道が目の前にあっただけだ。
わたしがもっと頭が良かったり、運動ができたり、お菓子作り以外に得意なことがあったりしたら、もしかしたら別の道を進んでいたかもしれない。
でも“他の何か”はわたしにはなかった。
それなのに、その道をお父さんに否定されたから焦ったし、悲しかった。
「たしは平くんが言うような、すごい人間じゃないよ……」
「そうかな。でも、うちの学校の奴らから見ると、春川さんはそういう眩しい存在なんだと思うよ」
「わたしが眩しい? そんなまさか」


