「うん。教室、戻ろう。瀬戸に色々押しつけてきたから怒ってるかも」



面倒そうに頭をかく平くんに、わたしは無理やり笑顔を作ってみせた。

いま、傷ついてる、なんて顔はちょっとでも見せちゃいけない。



「あは。それは悪いことしちゃったね。もどろもどろ!」


平くんの背中を押して歩き出す。

こうしていれば、彼に顔を見られなくて済む。


平くんは優しいから、無意識のうちに甘えてしまっていた。


これじゃあだめだ。

大切ならちゃんと、しっかり相手を見て、相手の気持ちにすぐ気付けるようにならなきゃ。


本当に優しい、平くんみたいに。