そのあったかさに、くすぐったい気持ちになる。
潰れたケーキが少し、形を取り戻した気がした。
「……あ。篤」
平くんの名前を呼ぶ声にはっとして、慌てて彼から一歩離れる。
こんな人目の多い廊下で、わたしってば何をやってるんだろう。
「聡か……」
「え」
平くんの呟きに彼の視線を追うと。
廊下の真ん中に、もうひとりの平くんが立っていた。
同じ顔で、でも雰囲気のまるでちがう、平くんの双子の弟。
わたしが以前好きだった、平聡くんだった。
その聡くんの目が平くんから横のわたしへと移り、意外そうに見開かれる。
「あ。ええと、春川さん、だよね」
「は、はいっ」
「1年の時、同じクラスだった」
コクコクと、何度も頷く。
彼が自分を覚えているなんて、思ってもなかった。
正直、すごくうれしい。
聡くんは微笑みながら、わたしと平くんを交互にみやる。


