平くんと同盟を結ぶ前。

ひとりで息をひそめて生活していたわたし。


あのまま卒業していたら、高校生活の思い出は全部、色味のないものに変わってしまっていたと思う。


楽しいことをしようって、平くんが誘ってくれたから。

だからわたしは顔を上げて、戻ってきた世界の色を、この目に焼き付けることができている。


友だちや弟のことだって、なんとかしようって思えるようになった。


だから――。



「まだまだ、楽しいことしようね?」



笑顔で心から言うと、平くんの大きな手が伸びてきて、わたしの頭をわしゃわしゃ撫でた。

まるで犬にするみたいに豪快に、でもどこか優しく。