わたしはただ……。
ただの自己満足の為に、葉子ちゃんに話しかけただけだ。
ああ、そっか。
拓や葉子ちゃんのイライラの理由が、少しわかった気がした。
「わたし、バカだからさ」
「バカじゃないよ」
「ううん。バカだよ。自分がいちばんわかってる」
笑って、冷えてきた膝を叩いて立ち上がる。
手の震えがまだ少し残っていたから、それを隠すのに後ろ手を組みながら階段を下りる。
「ごめんね、平くん。心配して来てくれたの?」
「泣いてるんじゃないかと思って」
「泣いてないよ」
「泣いてたじゃん」
呆れる平くんの横を通り過ぎて、教室のある階に向かう。


