卒業まで100日、…君を好きになった。


少し下にある踊り場から、平くんがこっちを見上げ首を傾げた。


表情の変化に乏しい彼の顔にも、心配の色がうかんでいて。

わたしは温かい気持ちになって、首を振った。



「泣いてないよ」

「泣きながら言われても」



困ったように平くんが言うから、あわてて目元をぬぐう。


しまった。

手にベトベトが残っていたのを忘れてた。



「前も言おうと思って、言わなかったんだけど……」

「うん? あ。わかった。わたしがバカだって言いたいんでしょ?」

「いや、春川さんはバカじゃないけど……おひとよしだよね」



おひとよし?


はじめて言われた。

わざわざ自分を嫌ってる相手のところに行くのを、おひとよしって言うんだろうか。