お尻が冷たい。寒い。
でもとてもじゃないけどまだ、教室に戻る気にはなれない。
深く長く、息を吐く。
冷えた手は微かに震えていた。
拓に投げ捨てられたチーズケーキ。
葉子ちゃんに拒絶されたイチゴのケーキ。
あの潰れたケーキたちは、わたしの心と同じだった。
痛い。痛い。
柔らかなスポンジも、潰れれば痛い。
ケーキは喋らないけど、痛ければきっと泣く。
すん、と鼻を鳴らした時、誰かが階段を上がってきたのがわかった。
気づかうように静かにそっと、足音を忍ばせて。
でもこの階段を上がるリズムは、彼のものだとすぐにわかった。
「……泣いてる?」


