「ごめんね、葉子ちゃん」
葉子ちゃんは悪くないから、気にしないでいいんだよ。
そういう気持ちをこめて言ったつもりだけど、伝わったかどうかはわからない。
でもこれ以上ここにいたら、わたしも上手く笑えなくなりそうで。
張りつけた笑顔がはがれ落ちる前に、教室を飛びだした。
蛇口からでる冷たい水で、おざなりにクリームを洗い流したあと。
人目を避けて歩いた先にたどりついたのは、いつも平くんとお弁当を食べている、屋上前の階段だった。
石鹸も使わなかったから、手がべたべただ。
残っていたティッシュで、手とそれから、足についたクリームを拭いとる。
「やっちゃったなぁ……」
階段に座り、膝に顔をうめた。


