しゃがみこんで、ティッシュを出して、潰れたケーキを紙皿に戻す。
すると奈々が駆けよってきてくれた。
「唯、わたし拭いておくよ」
「奈々。でも……」
「あー。唯、靴下と上靴も汚れちゃってる。手もクリームだらけだし、洗っておいでよ」
本当だ。
よく見たらわたし、白いクリームだらけ。
「ありがと奈々」
「いいのいいの。早く行っといで」
「うん」
ちらりと葉子ちゃんを見ると、いままで見たことのないような表情をしていた。
くしゃりと顔を歪めて、唇を噛んで、何かに耐えているような。
まるでそれは、悪いことをしたとわかっているのに、素直に気持ちを言葉にできない、小さな子供みたいな顔だった。


