本当は葉子ちゃんも食べたいって思ってるはずだから、と。
わたしはこの時、妙に強気になっていたのかもしれない。
「だからさ、ひとくちだけでも……」
「しつこいなぁ! いらないってば!」
差し出したお皿を、葉子ちゃんが押し返す。
その反動で、もろい紙皿が曲がって……。
ぐしゃり。
冷たい床に落ちたケーキは、無惨に潰れた。
生クリームが床に飛び散り、上靴にはねた。
赤いイチゴがころころと転がっていく。
葉子ちゃんは、しまったというような顔をした。
だから、わざとじゃないんだってことはわかった。
でも床に落ちたイチゴのケーキに、拓に投げ捨てられたチーズケーキが重なって、わたしは動くことも、言葉を発することもできずにいた。


