「琴梨、あの時約束を破っただろ?俺」
「約束?」
「結婚式に行く髪型を、
俺がセットしてやるっていう約束」
「う……うん」
「今、もう一度約束させてほしい。
俺たちの結婚式の時には、
琴梨の髪型を、俺が絶対にセットするから」
「私たちの……結婚式?
う……うん。
楽しみにしてる」
「じゃあ今度時間ができたら、
一緒に結婚式場の見学に行こうな」
「礼音くん……気が早すぎだよ……」
「じゃあ、これも早い?」
「ん?」
俺は自分の部屋から、
一枚の紙を持ってきた。
「これって……」
「婚姻届け。
俺はもう、記入してあるから」
琴梨の瞳には、
大きな滴がたまって、
つーっと頬をつたっていく。
「琴梨、今度の休み、出しに行こうな。
婚姻届け」
「うん」
ダイヤモンドのようにキラキラ輝いた瞳が、
俺をまっすぐに見つめ微笑んだ。
俺はその輝きを包み込むように、
優しく琴梨を抱きしめた。



