タクシーの中では、
お互い一言も話さなかった。
アパートのリビングに着くと、
礼音くんが口を開いた。
「外、寒かったな。
俺、紅茶入れてくるから、琴梨は座ってて」
「私がやるよ」
「いいから」
礼音くんは私に微笑むことなく、
キッチンに消えていった。
私はローテーブルの前に進み、
ぺたりと床に腰を下ろした。
視線の先にある全身を写す鏡が、
幽霊みたいな私を映し出している。
今このアパートにいる私は、
地味子だ。
メガネをかけて、長い前髪で瞳を隠して、
グレイのパーカーに、デニムのパンツをはいて。
礼音くんと釣り合わない。
礼音くんの好みなんかじゃない、
落ちぶれた私。
私の隣に置いてある
ファッション誌のモデルさんの、
キラキラした輝きと比べたら、
私は子供が作る泥人形みたいに見える。
こんな私になっちゃって、
礼音くんは、どう思っているんだろう……
今のままの私じゃ、
好きになってもらえないよね……
親指の爪を、
指の腹でこすりながらうつむいていた。
その時
ふわりと温かいものが、
私の体を包み込んだ。



