俺は母さんを、守ったつもりだった。
だけどこれは、列記とした殺人を犯しただけだ。

警察と救急車を呼び、俺は過失の容疑で疑われたが、俺と母さんの身体の傷跡から正当防衛だったと認識され、少年院への道は閉ざされた。
父さんはもうあの時点で死んでいた。
病院へ行っても、やはり「死亡」と確定された。
母さんは精神的なダメージを受けてしまって、しばらく入院することになった。

……俺の、せいだ。

お見舞いに行くと、母さんは毎回俺にこう尋ねた。

「どうしてあの人を殺したの?」

と。
最初は、何故そんなことを聞いてくるのか理解出来ていなかった。
あんなに父さんから暴力を受けて怖い思いをしたのに、どうしてそんな、悲しげで……不安そうに……。

「母さんを守りたかったんだ。あのままじゃ、母さんが死んでた……ああするしかなかったんだよ」

俺がそう答えても、母さんはいつも布団に潜り込んで泣いているだけだった。
でも、この日は違った。

「……どうしてよ…………どうしてよ!!あの人は優しくて……そりゃあ暴力的なところもあったけど……それでも私が支えていきたかったのに!あの人の不満は……私が全て受け入れてあげたかったのに!!返してよ……あの人を返してよッ!!」

それで俺は気づいたんだ。
母さんは、あんな父さんでもまだ愛し続けていたということに。
俺は母さんを守った気でいた。
でもそれは違った。
母さんを、ただ傷つけただけだったんだ。
母さんの心をボロボロにしたのは…………俺だったんだ。