「…飯島…翔……殺し屋…」
「知ってんの?」
「誰かから聞いた事ある気がしただけ」

少しは考えたがそれも 10秒位の話し

「ぷはっ…はっはっはっは」
「…?」

紗奈の無感情さに我慢の限界がきてしまい
笑いが止まらなくなり爆笑した 飯島翔 ーー
突然の事で紗奈はついていけず
変な物を見たかの様な視線で 飯島を見る。

「はー、笑った、はははは」

飯島は おっかしー と笑いをするものの
紗奈の感情は何処に…。

「そんで?…君は何の為に生きてんの?」
「は?」

飯島は笑うのをやめて普通じゃ絶対しない
増してや紗奈に触れる事ない質問を被せる
ずっと石みたいに固かった紗奈は反応した

「君の何がそーさせたかは知らないけど」
「…」
「なんで生きてんのか聞かせてよ」

柔らかい表情で紗奈に質問していく飯島

「…飯島……さん…私は…私はっ」
「うん」

唇を噛み締め 拳を握りその際に爪が食い込む

「弟のため。あの子が私の生き甲斐。」
「なるほど。弟が居なくなったりすると?」

郁斗が居なくなる ーーーと言葉にビクついた
自分の全てが郁斗でしかなかったから。
でも少しわかった、事があった。

「あの子がいなければいつ死んでも構わない」

考える余地も無くスラッと言い切った紗奈に

「ほう…それは…実に面白い」

飯島は、立ち上がり紗奈の真横に移った

「君のその命…うちで預からせてくれない?」
「…この……命?」
「あー、つまり…私達と仲間にならない?」
「仲……間……嫌…ハァ…いや…やっ…」

仲間 という言葉一つで あの時 が 蘇る。
そうして、過呼吸になり始めたが

ギュッ

「へ………」
「大丈夫…大丈夫だから…落ち着きな」

柔らかく、そして優しい温もりが紗奈に襲う
ーー落ちつかせる様に紗奈を抱き締める

「君は十分な程頑張った。肩の荷下ろしな」
「……っ」
「私達は、誰一人として裏切らないよ」
「……ヒックッ……ウッ」
「君には早すぎる世界かもしれないが向いてる」
「……ヒックッ…ウッ…」
「いや、君を必要しているんだ…紅月紗奈」
「私……が……必要……」
「もう一度だけ…人を信じてみないか?」

片足の膝を床につけ紗奈の手をとる
怖い笑顔ではなく暖かい笑顔を向ける

「……はい。」

紗奈は了承した。何故かと言うと理由があり
それは二つ。1つは必要とされている事であり
もう1つは…何故か父親と飯島がどことなく
似ていた為 紗奈は 断らずに了承をした。

「よかった…これから宜しく…紗奈。」
「はい…でもこんな私が仲間に…」
「もうその鉄の仮面も鉄の心も壊しな」
「えっ」
「仲間になるなら必要ないんじゃないかな」
「…はい。でもこれだけは聞いて欲しい」
「なんでも聞くよ、続けて」

お前が裏切り者じゃないかーー
そう言われてしまいそうで怖かったが
包み隠さず全てを丸ごと話した紗奈ーー
そうして、それを聞いた飯島はキレかけた。
表情で、悟った紗奈は気付かぬふりをした

「ーーと…ここまでが今の私までの話しです」
「……」
「……はぁ。それで?」
「え?」
「だから…それで?君はどうしたの?」
「何も…言葉も暴力も…何も感じなくなった」
「…弟は?」
「あの子は……多分…喧嘩の日々です。」
「こじらせてんな〜 君達姉弟は。」
「え…」

笑っている飯島に対して紗奈は驚いてる
自分の過去を話したのに笑っているから
怒鳴られも殴られも何一つされないから

「まー、強いて言えるなら一つだけあるよ」
「一つ……だけ…ですか?」
「じゃ、少しだけ昔話をしようか。」
「はい。」
「俺は昔君とは比にならない程荒れてた」
「……はい」
「誰一人として止めきる奴は居なかった…」
「……」
「でもその後に…出逢えたんだ…凄い人に」

出逢えたんだ、凄い人に。と話していく
飯島はどこか懐かしげに…悲しげに…告げる

「凄い……人」
「こー見えて俺あだ名が鬼畜だったんだ」
「きちく…」
「どんな奴が来ても俺を止められなかった」
「……」
「完全にあの頃の俺は全てが死んでた。」
「っ」
「そうだね、でも紗奈よりも酷かったよ」
「私よりも……」
「殴ろうが引きずろうが気持ちは皆無」
「……」
「そんな時に知らない男が現れたんだ」
「……。」
「その男に何故か邪気回し襲いかかった」
「っ」
「ふ…でもね…負け知らずな俺が負けた。」
「えっ」
「喧嘩では一応負けた事はなかったんだ。」
「それだけの……」
「クスッ……そうだよ、それだけの人だった」
「俺は悔しくて何度も這い上がった何度も」
「…だけど…勝てなかった…?」

紗奈の言葉に驚くがクスッと笑ってみせる

「そう。彼はね違う都市の族長だったんだ」
「っ暴……走…族」
「彼はね強いだけではなく人望も厚かった」
「……」
「そんな彼に言われた一言が俺の全て変えた」
「……一言……」
「そうだなー、」

そうしてその時の話をし始めた

「はぁ…はぁ…クソッ…んでだよ…何で!!!」

飯島の手には血だらけで骨も折れている
そんな飯島の前には男が一人いる。

「お前さ…なんで生きてんの?」
「ぁあ?!」
「同じ人間なのに生気感じねんだよな」

男は ふっ と笑い 飯島に話し始めた

「じゃ…なんで喧嘩すんの?」
「してーからに決まってんだろ!」
「……今のお前じゃ俺には勝てねーよ」
「っ クソ!んでなんだよ!」

男の告げた一言により、怒りが爆発しかけた
飯島は鬼畜と呼ばれるだけあって短気だ。

「お前さ、守りてーもんってあんの?」
「守る?…いらねーよ荷物なんてよ」

男が発した一言に今度はニヤついた飯島

「もう十分な程頑張ったんじゃねーのか?
もう肩の荷を下ろしてもいい頃だろ〜 」
「っ前に……お前に何がわかんだ!!!」

男は後ずさる事などなく話を続ける
それも……真剣な眼差しで。

「知ってっか?この言葉」

ーーー男が今から告げる言葉は
普通かもしれないがその時の飯島には
凄いデカすぎる…胸に響く言葉だった。

「自分の限界は自分で決められる」

ーーー何故か飯島は涙が出た。

「お前にもいつか分かる日がくる…きっとな」

「自分の限界は…自分で……決められる…」

十分な位 飯島の胸には刺さった一言だった