シニカルさを取り戻したような表情で



「気持ちいいくらい、打算的だな」



社長がそう笑う。




視線がくちびるに落ちて




社長の親指が、私の唇にふれる。




たしかめるように




優しく、なぞるようなその指は




言葉とはうらはらに、優しくて




私は、震えそうになる。




問いかけるように、




さとみの目をのぞき込んだ




社長の瞳が




ゆっくり、近づく。




まるで、私の中の何かを確かめようと




するかのように




社長の瞳は




私の心を離さない。




ゆっくり近くなっていくその瞳に




動けなくて




数センチの距離の




社長の瞳から目がそらせない。









そのとき、社長の携帯が遠くで鳴った。




一瞬 




間をおいて



「ちゃんと冷やしておけよ」



そう言って、




社長は何も無かったように



背中を向けて



行ってしまった。