「どうして、こんなこと…」



なんと続けていいかわからないさとみは、



もう一度、言葉を紡ぐ。



「どうして、こんなことしてくれるんですか」



何でこんなことしてくれるんだろう。



ずっと不思議に思っていたことだ。



現実主義で、無駄なことは大嫌いな人。



冷徹な氷の王子様。



平社員にこんな手を差し伸べるなんて。



きっと誰も信じないくらい、稀有なこと。



どうして。



「暇つぶしだよ」



氷の王子様は平然と告げた。



「それだけ」



「それ以上でも、それ以下でもない。」



「変な期待はするな」



切り捨てるような社長の言い方。



「するわけないです」



さとみは急いで言った。



何でそんな。



そんなつもりで言ったんじゃないのに。



私は何も持っていないけれど、当たり前のように、



自分にむらがってくる女の人たちと一緒にして。



社長の言い方って……



むかつく。



「みんなが、女のひとが全員、



社長といたがると思ったら



社長のことが好きだと思ったら



大間違いですから」


珍しく強気で、さとみが言う。