目を丸くしたままのさとみが 「やだ、 社長。 泣かないで」 思わず、葛西の両頬を包み込むように 手を差し出して 指で涙をぬぐう。 心配そうに見上げる瞳。 今の今まで 俺を拒絶する言葉を口にしていたのに 細胞レベルで 冷たくなりきれないおまえだから。 泣いた記憶なんて ガキの頃にしかないのに 大人になって、初めて泣くのが 好きな女の前だなんて そんなかっこ悪いおれを なぐさめようと動く 心根の優しいお前だから