嘘つきシンデレラ




物心ついたときから、




家の中でおれは王様だった。




何をするにでも俺が中心で




それが普通だったから、




おかしいと思うことなんてなかった。




姉ちゃんがわがまま言わないことも。




母さんが姉ちゃんを見ないことも。




当たり前だった。




だけど、だんだん外の世界を知って、




うちはおかしいのかも、と気づいたけれど




何を変えればいいのか、




どう変えればいいのか、わからなかったし。




おれに優しい姉ちゃん。




何でも叶えられるような居心地がいい場所。




それを壊したくない。




そんな自分勝手な、ずるい気持ちもあって




何もできずにいた。




だけど、やっぱり




姉ちゃんを犠牲にして成り立っているその場所は。




居心地がいいはずのその空間は、




徐々に罪悪感に占領されて、息苦しくなって、




俺はただ逃げたんだ。




外へ。




野球に。




大好きなものに打ち込むことで、




歪んだ場所から逃げ出した。




外へ、外へ。




姉ちゃんを置き去りに。




ひとりで逃げた。




その俺の自己中心的な卑怯さが




姉ちゃんを苦しめた。




だから、ぜったいにこれからは




姉ちゃんはおれが守る。




姉ちゃんは幸せになるんだ。




そう決めたんだ。