関係ないかも。
社長じゃないかも。
葛西の関係でも、わたしとは関係ないかも。
そう思うのに。
さとみは、食堂の二階の自分の部屋。
家具らしい家具はない四畳の和室。
膝を抱え込んだまま、動けない。
心臓が痛くて
自分のこの暗い視界から出たくなくて。
ギシ。
智くんの階段を上る音。
コンコン。
ふすまにノック音。
「姉ちゃん…」
答えないさとみに、智がためらいがちに尋ねた。
「本当に、会わなくていいの?」
「用事があるなら…
智くんが聞いておいて」
ふすま越しのさとみの声。
「忙しいひとだから、きっとすぐ帰るよ」
「でもさ」
言いかける智。
「お姉ちゃんの味方してくれないの?」
静かなのに、少し感情的な姉ちゃんの声。
もちろん。
姉ちゃんの味方に決まってるじゃん。
姉ちゃんのことしか考えてないよ。
だけど、姉ちゃん。
時々、夜中に泣いているだろ?



