流し場で、ネギを刻む。




ランチタイムまで、一時間。




少し急がなくちゃ。




作り的にはやや縦長の食堂。




入って右側にテーブル席が4つ。




左側にはキッチンに沿って、




作りつけられたカウンター席が並ぶ。




地元の人しか来ない定食が主な、




小さな食堂だけど、




お昼ごはんの時間には、




席も全部埋まってしまうので、




結構忙しい。




店長とさとみと、




ランチタイムだけくるパートの三原さんで 




手を動かす。




ガラガラ。 




店の扉が開いた。




「姉ちゃん!」




智くん?




さとみは持っていた、ボールを置いて




カウンターから顔をだす。




走ってきた様子の智くんが息を荒くしている。




「まだ、昼休みじゃないでしょ?




どうしたの?」




さとみが言う。




「何か今日、あの。




空港にプライベートジェットが」 




慌てた様子の智くんが、息をつきながら言う。




すかさず、恰幅のいいお喋り好きな、




パートの三原さんが口をはさむ。




「知ってる、知ってる。




さっきやろ?




すごい音したじゃない。




聞いたことないエンジンの音だったもんで。




こんな小さい島だから聞こえるんだろうね。




さとみちゃん。聞こえなかったの?




ちょっと前よ。




ほら、テレビであの番組がやりよった時間だから…」




話し続ける三原さんを無視して、智くんが言う。




「何か、吉田先生が知ってて」




さとみは、何かここでイベントでもあるのかな。




そんな慌てるくらい有名なひとが来るとか?




そう思いながら手を動かしだす。




「葛西の…




ロゴの入ったプライベートジェットだったって」




ガチャン。



さとみの手からボールが離れる。




「あらーさとみちゃん。




どうしたのー。大丈夫?」




三原さんの、のんきな声。