エレベーターが上昇する。 いつものように、鍵をあける。 空気が動いた。 誰もいない、静かな部屋。 葛西はコートを着たまま、 リビングにたたずむ。 何も変わっていない。 いつもの部屋。 さとみはいない。 わかっていたことなのに、何だろう。 立ち尽くす自分がいる。 何を期待したのだろう。 ソファのローテーブルのうえに 何かを見つけた。 そこには、 葛西が渡した小切手が二枚。 それと、一言だけ書かれた紙。 幸せになってください