社長。


 

わたしがどうして、




社長に何も言えなかったか。




嘘をついたか。




智くんのためでも、




何で、あんなことしたか。




わからないでしょ。




きっと、社長は何もわかっていない。




ううん。




社長はわかる必要もないと




切り捨てたんだね。




おじいさん。




ごめんなさい。



私では、やっぱりだめだった。




社長は私なんか、必要ないんだって。





社長。




さようなら。











「姉ちゃん!」




「どうしたんだよ。何が」




人が行きかう歩道。




智が駆けよってくる。




「姉ちゃん?」




視線をあわせようとする智。




そこで初めて、智に気づいたようなさとみ。




「智くん?」




倒れそうにみえるさとみの肩を




智が支える。



涙で濡れたさとみの頬。




涙はとまらなくて、 




さとみ嗚咽をもらした。