会社に行かないと。




さとみは何とか立ち上がった。
 



会社のロビーで社員証をかざす。




ピッ。




さとみは、霧の中にいるように




頭がスッキリしなくて、ただ機械的に歩く。





泣きすぎて頭が痛い。




「ん?」




やっと、視線に気づく。




何?




会社のみんなが私を見ている気がする。




気のせい?




…じゃないみたい。




だいぶ冷やしたのに、




そんなに目腫れてる?




「さとみちゃん!」



エレベーターホールからマキちゃんが、



すごいいきおいで走ってくる。




「こっち!こっちにきて」




マキちゃんはさとみの腕をつかむと、



ロビーの端っこへ、さとみを引っ張っていった。




「さとみちゃん。




これさとみちゃん?だよね。」




呼吸を何とか整えたマキちゃんが、



真剣な表情で携帯を見せる。



マキちゃんに見せられたは



社長と女の人の画像。




繁華街?




え、待って。これ。




マキちゃんの携帯の中には、



社長とあのホステス姿の私。



社長が私の肩に手をまわして、



二人が寄り添って歩いている。



ように見える。



ハッシュタグには社長と社員の恋。




文章も載っている。



社長と社員の怪しい関係。




社員A子さんの裏の顔。 




雇用契約違反の社員といけない関係。