葛西はシャワーを浴びようと、
ずぶ濡れのジャケットを脱いだ。
社長室の続き部屋。
シャワーブースと簡単なクローゼット、
横になれるベッドが置かれた空間。
そこにいた葛西の耳に、
社長室のドアが開く音が聞こえた。
秘書が替えのシャツを
買ってきてくれたのだろう。
シャツのボタンを外していた手をとめ、
葛西はタオルで顔をふきながら社長室に戻った。
続き部屋のドアを開けて
「すまな」
言いかけた葛西。
社長室のドアの前にいたのは
さとみだった。
「なにし。」
驚いた葛西の目が丸くなる。
後ろでにドアをしめたまま、立っているさとみ。
くちびるをかみしめているその表情は、
まるで、泣くのを我慢しているかのよう
さとみは何も言わず、
葛西の腰に抱きついた。



