社長がリビングルームの明かりをつける。
バサッ。
社長が何かの書類を投げつけるように、
ソファの前のローテーブルに置いた。
『藤崎さとみにおける調査報告書』
なにこれ
「私のこと、調べたんですか?」
葛西を見上げるさとみの目が非難している。
「当り前だ」
悪びれもせず葛西が言った。
何でそんなこと。
私を知りもしない人が、
勝手に私の思い出や、過去を探って。
ずかずか踏み込んでいたなんて、
どんなに不快なことか。
社長にはわからないの?
さとみは急いで、テーブルの書類をめくった。
最近のさとみの行動が主な報告で、
家族や過去については
簡単にしか報告はなかった。
「どんな奴が、
何を目的で近づいてくるか、わからない。
身近に置くものを、調べるのは当たり前だ」
社長が、脱いだジャケットを
無造作にソファにおいて言った。
さとみの手の中に、
クラブで働く自分の写真があった。
自分なのに、まるで知らない人のよう。
派手な衣装とメイクで、笑っている。
報告書を食い入るように見ているさとみ。
ラグに座り込んださとみの
スカートのスリットからは、
太ももがあらわにのぞいている。



