お店を出たさとみと葛西の前に
ブラックのベントレーが、音もなくとまる。
運転手がドアを開けた
静寂がつつむ車内。
さとみは何をどう言えばいいのか、
わからない。
社長が本当に抱えていきそうだったので、
さとみはお店の恰好のままだ。
太ももまでのスリットの入ったロングドレス。
大胆に開いた胸元。
さとみらしくない濃いめのメイク。
こんな格好見られたくなかった。
さとみは動けない。
社長をみることもできない。
この空気におしつぶされそう。
社長は無言なのに、
ピリピリ
すごい怒りが伝わってくる。
いたたまれなくて、
自分を守るように手を身体にまわすしかできない。
社長、すごい怒ってる。
当然だよね。
ほんとに、どうしよう。
「いいわけもなしか」
社長の冷たい一言に、
さとみはますます言葉がでない。
「まあいい。話は帰ってからだ」
そう言ったきり、社長は黙ってしまった。



