グラスのぶつかる音。




そこかしこに響く、高い笑い声。




たばこのにおいと香水でミックスされた店内。




近づくお客さんのアルコールの匂いが鼻につく。




きらびやかで、まぶしくて、




しんどい 虚像の世界。




「ミヤビちゃん。



5番にご指名です。お願いします」




さとみは顔に笑みをはりつけて、




テーブルに向かう。




足取りがどうしても、遅くなってしまう。




もともと向いてなかったけど、




いつもにまして苦痛で




社長をだましている罪悪感で




心がバラバラになりそうで




苦しくて、息がしづらい。




「ミヤビちゃん!」



同僚の女の子が、興奮して声をかける。




「すごいお客さん持ってるじゃん!




どこで知り合ったの。




私もヘルプでつかしてよー!」




誰のことだろう。




指名してくれた人って、誰?




ほんとだ。




店内の女の子がみんな、何気に注目している。




どんな人?




知っているお客さんだよね。




指名だし。




誰?




5番テーブル。




近づく肌が、ピリつく




予感がした




みんなが驚くような VIP




いるだけで周りをピリつかせるこのオーラ。




まさか