ズキ。
嘘つきな胸が、ずるく痛む
もし、泣いてるって
社長が気づいたら、
熱で浮かされているせいだって
思ってくれるかな。
「寂しいだなんて、感情は
ない。
そんなものは甘えなんだよ。
愛情なんて見えないもの、
言葉だけの幻想で、
俺には必要ない。」
まるで、教科書を読むかのように、
すらすらと、社長が言った。
「お前には考えられないか」
声の響きで、
社長がさとみの方を、向いたのが分かった。
「そんなの甘いこと言ってたら
うち(葛西)じゃ、つぶされる。
優しいなんて言葉とは程遠い
家系だからな」
自嘲ぎみに、社長が笑う
「そんなことないですよ」
さとみが涙を押さえようと、顔に手をやる
「?」
社長が、首をかしげ問う。



