ギシ。




社長が、そばにすわる気配。




「水飲めるか」




「社長。ごめんなさ」




言いかけるさとみに




「もう。わかったから、



謝るな」



社長がさえぎるように、言った。




社長の手が、さとみの首元にふれる。




「熱が上がったら、



コレを飲むんだろ」




社長が錠剤を差し出す。




コクン。




薬をのみくだして、また横になる。




「ケホっ。ゲホッツ」




「ありがとうございます」




身体がもえるように熱くて、呼吸が乱れる。




「だいぶ、赤みがひどくなってきたな」




葛西がさとみの指先を手に取り、明かりに近づけた。




「薬塗れるか」




「はあ」



吐息がもれる




「後で、塗っておきます」




確かに、体温が上がって、




指先がひりひり、ピリつく。




だけど、今は身体を動かすことさえ




だるくて。




一箇所だけを照らす明かりの中、




わずかに社長の横顔がみえる。




社長が無言で、薬のキャップを開け、




さとみの手に塗り出す。






「しゃちょうー。





そんないいです。





社長にそんなことさせるなんて」





情けなさげな声を出すさとみに





「確かに。




俺にこんなことさせるのは、





お前くらいだ」




ちょっと笑って、社長が言う。




しゃちょうー。




何で、そんな




優しくするんですか




きつくて、しんどくて




自分の呼吸音だけ聞こえる。




暗闇にいたのに。





心もとなくて





自分は独りだと、寂しくて





涙がでそうな夜に





社長がそばにいてくれる。





優しい社長の手。





ぼんやりした明かりの中





社長の横顔に




泣きたくなる。