「……がいるんです」




さとみなどもう存在しないように、



立ち去る背中に言った。




「お金がいるんですっつ。




どうしても、



どうしても



クビになるわけにはいかないんです!」





びっくりするくらい、大きな声でさとみは続ける。





その声に、動きが止まり、





社長が振り返った




無表情だった顔が




さとみの声の調子と、表情の




アンバランスさに気を取られたように




驚きにかわる。




「お金がいるんですっつ。



何でもします。



何か。私にできることなら何でもっ」




きっと、滑稽でみっともなく 映っている。




「何でもしますっつ」




デスクから私を見つめる 




無機質なガラス玉みたいな目にむかって



叫んだ。




不透明なその目は




私をみつめるだけ