俺までその赤いのが移りそうで、弁当に視線を移して食べ始めた。

「…あっ、黒崎先輩! あっち見て下さい!」

数秒後にはもううるさく俺の名前を呼ぶ後輩(ちび)
笑ったり照れたり叫んだり、ほんと騒がしいやつだ。

「あじ、さい?」

「綺麗ですね〜っ!」

あっちだと指をさした先には、花壇の隅のほうに隠れるようにして青く光るアジサイが見える。

「先輩、アジサイの花言葉って知ってますか?」

こいつもやっと弁当を食べ始めたかと思えば、そんな質問をされた。

「……いや」

興味ねーし。

「アジサイって色によって花言葉が変わってくるらしいんですが、全体的な意味で、"冷淡"、"冷酷"、"辛抱強さ"とか、"無情"っていうのもあるんです」

…ほぼ俺じゃねーか

「あとは、"移り気"」

「………」

俺はこいつの目線の先のアジサイを見る。

「移り気は、アジサイがたくさん色を変えることからだそうです。
それが例えだとしても…悲しくなります。 あんなに素敵な花なのに……」

「…人間が勝手につけたもんだろ。 花には関係ない」

花言葉で悲しくなるとか、やっぱバカなの。