「相方には? 言ってないのか…?」
先輩のその優しい問いかけに、私はコクンとひとつ頷いた。
「美羽に言ったら自分のこと後回しで、私に勉強教えると思うので…」
前から美羽は「小枝、勉強してる?」って声かけてくれてたのに、先輩のことで頭いっぱいにしていた私は、ただ"大丈夫"としか答えていなかった。
先輩の言う通り、全然大丈夫じゃなかったのだけれど……
「美羽には言わないで下さい。 お願いします!」
「……あんたって、ほんとアホすぎ」
「へ…」
呆れたように溜息をつく黒崎先輩。
私がそんなことすら覚えておけないことに、また呆れられたらしい。
本当に自分でもアホだと思う。
「ムカつくから俺が教える」
「………」
……っ…!?
先輩が、教える……?
私にーー…!?
「人のことは一生懸命なくせに、自分のことは隠そうとするとか、こっちがイライラすんだよ」
…どうして……?
そんなこと、黒崎先輩が気にすることじゃないのに…。
「大体なあ! 周りに気遣ってないで、暇があるなら今この時間も必死こいて勉強しろ! もう俺にも弁当作ってくんじゃねぇ…!」
「…っ! そ、それは嫌です!」
「は〜〜…じゃあ今日の放課後…ここに来い」
先輩は大きな声で怒ったかと思えば、深い溜息をつき、私を鋭く光る目で睨みつけた。
まさか本当に、教えてくれるの……?