「い、いえっ! 何もされてないです! 花咲小枝、今日も元気です!」

私は元気に見えるよう無理やり笑顔を作る。

言えない……
金曜日の今日。
来週から始まる"期末テスト"の存在を忘れていただなんて……とても言えない……

ちゃんと先生がテストの話をしているのを聞いてたはずなのに、テスト勉強を後回しにしていた挙句、完全に頭から抜けてしまっていた。

「………昨日のこと、何で言わなかった?」

「え…?」

「突き飛ばされたこと」

先輩…今日なんか、優しい……?
いや、いつも優しいんだけど、雰囲気が優しいというか…オーラがいつもより、柔らかい…?

少しずつでも、先輩に受け入れてもらえてるんだろうか……
そんなわけないよね…。

「…昨日のことを知ってしまったら、きっと流川先輩は自分のことを責めてしまいます。
何も悪くないのに…そんなの絶対嫌だから。

…それに……」

「?」

先輩は不思議そうな顔をして私を見ている。

ふふ、その顔も素敵です。 先輩。

「ーー黒崎先輩が、助けてくれました」

先輩は本当に困ってる人をほっとけない。
優しいヒーロー。

「あっ、こんなこと言うとピンチの時は助けてくれって言ってるみたいですね…!
違くて…えっと…宝物みたいに、私の中にとっておきたくて……」

「宝物?」

「はい。 助けてもらったと言えば黒崎先輩の株は上がりますが、もったいなくて誰にも教えたくありません…! 我儘でごめんなさい!」

結局私は先輩の優しさに甘えてる。 ずるい人間だ。